灰色の殴り書き

昔の言葉で言うならチラシの裏です

「掛け算理論」が俺を生かしてくれた(年末自分語りシリーズ②)

①の続きです。

 

 

怖かったのは、人と違うことじゃない。

 

「自分は多数派にはなれない」ということを、ランドセルしょってる頃から理解していた自分にとって、そんなことは言われるまでもなかった。

 

その代わりに、自分は「大して変わり者でもない」と思い知らされることが、何より怖かった。

 

自分は皆のできることができなくても、見た目が良くなくても、人付き合いが下手でも、せめて「個性的な人間」なのだと思いたかった。

 

平均に絶対になれないなら、極端なのも面白いじゃないか。そう信じたかった。

 

けれど、世の中には、同世代には、自分なんか想像もつかないほど、ユニークな人間が数えきれないほどいる。

 

同い年でも、途方もなくすごい人生を送ってきた人が、先駆者が、発信者が、エンターテイナーが、たくさんいる。

 

そんな綺羅星と比べたら、自分は路傍の石、ただ歪み方がひどいだけの石に過ぎないことは、分かっていた。

 

花を咲かせないどころか、踏まれたら潰れて終わる、生命力に乏しいだけの雑草だと、本当は理解していた。

 

だから、「お前は全然個性的じゃないし、面白くもない。ただ人より劣っているだけだ」と、自分が自分へ常に言い聞かせてきた。

 

何様のつもりだ。調子に乗るな。

 

お前は思い上がっているだけで、実際には人並みの幸せには手が届かない上に、唯一無二の存在にもなれない。

 

凡人より下の層にいるだけの、大勢の一人に過ぎない。

 

そんな、冷たい目で俯瞰している自分が突きつけてくる真実が、ずっと心身をがんじがらめにしていた。

 

 

けれどある日、どこかの誰かがブログで、こんなことを書いていた。たしかサッカー選手だったと思う。

 

サッカーをやっている人間は、日本に何十万人といる。

 

だけど、同時にブログを書いてもいる人間となると、その数はグッと減る、と。

 

たとえばあなたに、1000人に1人と言える個性や特技がないとする。

 

せいぜい、10人に1人くらいの割合かもしれない。クラスでも3〜4人はいる計算だ。

 

けれど、そのくらいの個性を、いくつも持っていたら?

 

10人に1人の個性が4つ。

 

簡単に計算して、10×10×10×10=10000。

 

これでもう、あなたは1万人に1人の個性的な人だ。

 

そんなようなことが、書いてあった。

 

10人に1人くらいの個性、特技を4つ思い浮かべるのが面倒なので、一般的な具体例を挙げることができないのだが、試しに自分の中からいくつか、1/10くらいな気がするものを抜き出してみよう。自慢話に聞こえるものは無視してほしい。

 

 

1. 5時間以上一人カラオケをしたことがある。

 

2. 1万字以上のブログやnoteを5回以上書いたことがある。

 

3. 一日7時間以上読書に没頭できる。

 

4. 同じ映画を劇場で5回以上見たことがある。

 

5. インターネット上だけで、心を許せる友人が10人以上いる。

 

6. 年によっては積雪で窓が開けられなくなるほどの豪雪地帯に新卒で配属され、1年間生活したことがある。

 

7. 夜行バスに12時間乗ったことがある。

 

8. スキーやスノーボードが全くできない。

 

9. 古い日本企業の営業を7年やっていて、ゴルフを一度もしたことがないだけでなく、誘いも全て断り続けている。

 

10. たまに格闘技を見る以外、スポーツ観戦はオリンピックやW杯も含めて一切しない。

 

11. 足のサイズが大きすぎて、靴屋に履けるスニーカーが一つもない。

 

12. 飲酒による寝過ごしで、3回以上野宿をしたことがある。

 

 

とりあえず、キリがないので12個挙げてみた。

 

なぜ12個かというと、10の12乗がピッタリ1兆になるらしいからだ。

 

ということは、この時点で俺は1兆人に1人しかいない人間ということになる。

 

1/1兆の個性。これはなかなか結構な響きだ。満足満足。

 

 

もちろん、ここまで読んでくる途中で、皆様は既にお気付きになられたはずだ。

 

特技なんて呼べないネガティブな要素が多すぎるだろ。

 

そんなことでいいなら、誰でも何とでも言えるわ、と。

 

全くもってその通りだ。

 

ネガティブな要素でもいいではないか?

 

それだって立派な個性だ。他人と同じ土俵での自慢はできないけれど、隣の誰かとあなたを分ける、立派な証明だ。

 

誰でも何とでも言えて、それでいいではないか。

 

あなたのこれまで経験してきたことも、経験してこなかったことも、評価されたことも、評価されなかったことも、全てが等しく、あなたを「その他大勢の中の1人」から切り離す。

 

俺ほどメチャクチャな例を探す必要はない。それが5人に1人くらいの何かでも、10個集まれば、それだけであなたは1000万分の1人だ。

 

 

俺には何かを創作することも、大金を稼ぐことも、他人を感動させることも、魅了することも、勇気を持って一歩踏み出すことも、ギリギリのところで根性を出して踏みとどまることも、できはしない。

 

それでも、自分の中にある、いいことも悪いことも、カッコいいこともダサいことも、とりあえず変なことをありったけ並べたら、俺は今後1000年くらいは現れることのない、地球上でたった1人の人間だと、断言できる。

 

この「掛け算理論」は、誰かと優劣をつけるためには使えない。仲間内でマウントを取るのにも、Twitterでバズるのにも、オンラインサロンで信者を集めるのにも、使えない。

 

世間からのあなたの評価には、おそらく全く寄与しない。

 

あなたの能力を向上させる手助けにさえならない。

 

けれど、もしあなたが、「普通じゃない」と「大したことはできない」の板挟みに苦しんでいたら。

 

「自分なんて凡人に過ぎない」と思って、自信を持てずにいたら。

 

できないことに悩まされて、身近な誰かや、架空の他人と比べて落ち込むことがあったら。

 

そんなときには、掛け算理論をオススメしたい。

 

たとえ金にならなくても、自慢にならなくても、人には言えないような傷や恥でも、あなたを構成する全ての要素を掛け算したら、あなたの代わりになる人間は、宇宙のどこにも存在しないのだ。

 

 

俺は、これに救われた。

 

普通になれないなら、せめて変な人間だと胸を張りたい。

 

願わくば、自分の狭い人間関係の中であっても、「灰色は知り合いの中で一番の変わり者だ」と言われたい。

 

それが褒め言葉でなくてもいい。

 

ただ、どうやっても普通になれなくて、大人しくできなくて、真面目にやれない自分にとっては、「人と違う」ことだけが、拠り所だから。

 

あなただけの強みを探そう、なんて、俺以外のやつが腐るほどバラまいている言葉を使う気は一切ない。

 

ただ、一つだけ断言できることは。

 

それがどんな材料でもいいから、何回か掛け算を繰り返したら、あなたは他の全ての生命体から差別化され、唯一無二の独自性を持った、あなたという個を保証できるということだ。

 

こんなことが、俺以外の誰かの役に立つかどうかは分からない。

 

けれど掛け算理論は、呪いを解く手助けをしてくれた。

 

俺よりトークが面白いやつ。金を稼げるやつ。文章が上手いやつ。歌が上手いやつ。カリスマがあるやつ。

 

誰かの決めた基準を使えば、世の中には、自分より優れた人間が星の数ほどいることになる。

 

けれど、別に俺は星じゃなくていいし、花を咲かせなくていいし、地上に出てこなくてもいい。

 

ただ、灰色という、複製も代替もできない一人であることに、胸を張れればそれでいい。

 

俺は、本当はこれくらい特別な人間なんだと、自分で自分を認めてやれればいい。

 

さぁ、俺は、どんな人間だ?

 

 

20年間一人カラオケをしてきたし、連続で8時間歌ったこともある。

 

英会話に一秒も一円もかけなくても、同時通訳をしたり、海外同業のエリート野郎と交渉したり、酒を朝まで飲み交わすことができる。

 

22年以上インターネットの片隅を這いずり回りながら、友人を増やして減らしてを繰り返してきた。

 

HiGH&LOWにハマって、ツイートを繰り返しているうちに、フォロワーが2000人増えた。

 

ハイローFMの男限定上映で、リアル琥珀さんと龍也さんに会うことができた。

 

偏差値50代の高校から、塾や予備校に全く通うことなく、某私大の某学部に現役で合格した。

 

グラップラー刃牙の最大トーナメント入場選手紹介を暗唱できる。

 

「ダルタニャン物語」全巻を2ヶ月弱で読破した。

 

ヒプノシスマイクのオールスター曲を一人で全パート歌える。

 

メギド72のアクスタ祭壇を自宅に築いている。

 

ウルトラマン超闘士激伝の完結を約30年越しに見届け、1万字超えのnoteを書いた。

 

メダロットのゲームとカードの大会に出たが、すぐに負けた。

 

掲示板のラジオで、同時接続4000人にトークを聞かれた。

 

スーパーマリオを全くプレイしたことがない。

 

テントを持って夜行バスに乗り、剱岳に一人で登ったことがある。

 

3歳のときに人生で初めてプレイしたゲームが、父のMacintoshに入っていた世界で2番目に古いFPS「マラソン」

 

メギド72をリリース半年からずっとプレイしている。

 

スパロボだけで知ったロボットソングを50曲以上歌える。

 

ボーボボの単発ギャグキャラの名前を20以上言える。

 

モンスターハンターGの「四本の角」をソロでクリアした。

 

モンハンP2Gの闘技場のディアブロス戦で、ハンマーで1分20秒を切った。(おそらく世界記録)

 

小1の頃から、脳内で勝手に漫画やゲームと曲を合わせたMADを作り続けている。

 

サンプラザ中野くんの声マネでカラオケができる。

 

合宿の班長をやりつつ、35kgのザックを背負って、日本三大急登の一つと言われるルートを登った末、下山までに総量19kgの食料飲料を消費した。

 

さいたま新都心のけやき広場ビール祭りに、オープンからラストまで居座って飲み続けたことが複数回ある。

 

クラッシュバンディクー3を105%完全クリアした。

 

バルジ大喜利やDTC異世界転生のようなハイローのバカネタを公式制作陣に把握されている。

 

Slay the Spireを200時間遊んでアセンション20をクリアし、全プレイヤーの上位0.1%に入った。

 

SOUL’d OUTの曲の大半を噛まずに歌える。

 

日本語しか話せない部長が機能停止している間、海外の同業最大手の社長と英語で話して、必死に対等に振る舞おうとした結果、新規の輸出仕事を増やせた。

 

社員1万人以上の会社で初めて育休を取得し、産後2ヶ月の間は1秒も仕事をしなかった。

 

夜頻繁に起きる子供の隣で眠って、交代で少しでも妻を休ませるようにした。

 

テレワーク化も相まって、妊娠3ヶ月頃から1歳半まで、2年以上の間一日も子供から離れなかった。

 

復職後は17時まで仕事、20時まで家事育児、24時前まで仕事、というスケジュールを自宅で過ごしていた。

 

妻の精神的DVによってうつ発症・休職後も、1年近くは一日も休まずに同居で家事育児を続けていた。

 

妻による精神攻撃の理由の大半は育児とは関係なく、結婚前から数年間募らせていた恨みで、一生忘れないと言われた。

 

コロナ発症で40度の熱を出したのと同日にLINEで妻から事実上の絶縁宣言を受け、最愛の子供にはそれ以来一日も会っていない。

 

ベビーカーを見かけたり、アンパンマンのOPを聞くだけでフラッシュバックが起こり、寝込む時期が続いた。

 

弁護士を雇って離婚協議中だが、財産分与によって俺は口座残高の大半を奪われることが確定しているにも関わらず、相手はなおも自分から金をゆすろうとしている。

 

それと弁護士費用を合わせると、新卒から貯めてきた貯金のほとんどが消えてなくなることが決まっている。

 

自殺を考えるほど追い詰められたところから、フォロワーの言葉に救われて、生き延びることができた。

 

TMRのLIVEのために初めて遠征して滋賀県に行き、感動で生きる気力が少しずつ戻ってきた。

 

家庭の事情を何も知らせないまま、半年前まで元気だった祖父が急逝した。俺の誕生日の一週間前だった。

 

なんとかその日までは生きようと決めていたイナズマロックフェスで、アイドルに一目惚れした。

 

そのアイドルが、多忙を極める中でもnoteを読んだ感想をくれる。

 

雲の上の存在の西川兄貴に、わざわざ俺のことを紹介してくれた。

 

彼女たちFinallyのおかげで、毎日が楽しくなった。

 

ハイローがつなげてくれたフォロワーが、地獄に落ちたときに手を差しのべてくれて、一緒に酒を飲んだり歌を歌ってくれて、後輩がドライブに連れ出して気持ちを回復させてくれて、勇気を出して参戦したLIVEで西川兄貴の歌声に救われて、Finallyに惚れ込んで、今ようやく、それをブログに書けた。

 

 

誰も経験したことがないようなことならまだまだあるけど、キリがないからこの辺にしておこう。

 

さて、俺は何人に一人の人間だ?

 

 

他人に胸を張れるような人生じゃない。

 

人並みの幸せは二度と手に入らないだろう。

 

消えない苦しみや罪悪感と、一生付き合っていくことは間違いない。

 

ワガママを言いながらも実力で勝ち取った社内での最速・最高の評価も、2年の休職で2周以上の周回遅れになり、取り戻せそうにない。

 

Finallyは大好きだけど、現場のファンの中にはどうにも馴染めない。

 

HiGH&LOWシリーズは大好きだけど、ザワクロスは好みに合わず、盛り上がれなかった。

 

思い通りに行くことなんてない。

 

ドン底からは上がるだけだと人は言うけれど、その底が突然抜けて奈落に落ちることも、落ちた衝撃で骨折することも知った。

 

地獄は嫌というほど味わった。

 

けれど、時に天国を感じる程度には、浮上してきた。

 

 

今なら、俺は胸を張って言える。

 

俺は灰色だ。

 

誰も聞いていなくても自分が考えた言葉を叫び続ける、宇宙にたったひとりの人間だ。

 

何を喪っても、何を持っていなくても、俺はここにいる。

 

 

俺は灰色。

 

死ぬまで黙らない男だ。