灰色の殴り書き

昔の言葉で言うならチラシの裏です

人生で初めて、諦めたくない

風邪とはにわかに信じられないくらいの体調不良で寝込んでから、丸2日と少し。布団の中からブログを打っている。

 

連載を復活させるにはまだメンタルが追いついていない。

 

38度以上、体感では去年のコロナのときと同等だったので40℃近くの熱を出したり、その翌日の夜に食ったものを全部吐いたりしたが、なんとかスマホを打てるくらいになってきた。

 

陰性だとは全く思えないのだが、ひとまず祖母には何も症状が出ていないので安心している。

 

何もかもが終わった日からもうすぐ一年で全く同じ症状になって、これでコロナ2回目だったら全く愉快な人生だとなるところだったのだが、そうでないに越したことはない。2月末からフラッシュバックと悪夢には散々悩まされたし、もう十分だ。

 

今日書きたいのは別のことだ。

 

さっきスペースで聞いたのだが、リーダーがボソッとチケットをあと5倍売りたいとこぼしていた。

 

5倍。

 

覚悟はしていたが、その数字の無慈悲さにちょっと軽く絶望してしまった。

 

800人が昼夜で1600人。今売れているのがその1/5だとすると、単純計算で320人になるだろうか。各部160人の計算だ。

 

「今の5倍売る」だと厳密にはもっと少なくなるのだが、さすがにこれより残酷な現実は考えたくない。

 

1月のワンマンが推定120〜150人。それと比べると、昼夜片方しか来ない人が多いことを考慮すれば、かなり健闘しているのだとは思う。

 

そう頭では分かっているのだが、これほどまでに遠いとは思わなかった。

 

 

この間のアイドルの泣き顔が頭によぎる。

 

どこまでいっても、金なのだ。

 

自分たちで創意工夫を凝らし、鍛錬を積み、さらには人脈を活かして素晴らしい楽曲を作ってもらうことまでできても、広報でモノをいうのは金でしかない。

 

その事実を叩きつけられた。

 

気が遠くなる。

 

 

あと18日で、終わりなのか。

 

当たり前だが、誰一人として既存のファンはそのことを口にはしない。

 

さすがに全員がそこまで想像力のないバカばかりではないと思うので、考えないようにしているのだろうか、それともタカをくくっているのだろうか。

 

地下アイドルオタクをやっていれば、それこそ彼女らの前身グループのように解散だ卒業だを飽きるほど見てきただろうから、感覚が麻痺しているのかもしれない。

 

だからこそ敏感になれよ、だからこそ大切に思えよ、と怒りたくなるのはお門違いなのだろう。

 

ここでキレ散らかしても仕方がない。何よりの理由は単純に、生き方の違い、性格の違いでしかないのだ。俺だって、ここまでの交友関係に恵まれたのは偶然と幸運の産物でしかないのだから。

 

 

ただ、終わりが、破滅が近づいている。

 

それが恐ろしい。

 

永遠にそのときは来ないとしても、俺はまだ、なんで彼女たちに救われたのか、どれほど幸せにしてもらったのか、全く伝えていないのに。

 

それを伝えるのが、終わりが決まってからの「最後まで応援よろしくお願いします」期間になるのか。

 

まず耐えられないだろうと思う。

 

 

推し疲れだの、入れ込みすぎだの、そんな凡人と同等の物差しで俺という人間の異常性を測らせはしない。

 

そんなことはどうでもいい。

 

ただ、何か。何かしなければ。

 

もっと、もっと何か。

 

 

ソールドアウトはほぼ現実的ではなくなっただろうと思う。

 

手売りチケットを大阪でも一枚買ったが、その番号の進み具合を見て、あらかたの事情を察しもした。

 

それでも、一歩でも前へ。

 

一枚でも多く、一人でも多く。

 

俺にできることを全てやって、出せるものを全て出して、わずかでも前へ。

 

無意味かもしれないけど、たとえソールドアウトが叶わなくても、大赤字で進退を考えることになったとしても。

 

そのときに、「これだけの人が来てくれるなら、まだやれる」と思ってもらえるように。

 

まだもう少しの間、彼女たちが夢を諦めないでいいように。

 

大好きな人たちが、いなくなってしまわないように。

 

 

ソールドアウトできなかったらそこまでと、最初から決めているのかもしれないと思う。

 

それならば、俺のやっていることなんて何の意味もない。

 

他のファンらしい連中と同じく、力を抜いて能天気に楽しんでいればいい。

 

幾度となくそう思った。

 

 

けれど、わずかでも、砂粒ほどでも望みがあるのなら。

 

俺がやっていることが、彼女たちの心を繋ぎとめる助けになる可能性が、数百兆分の一でもあるのなら。

 

まだ諦めたくはない。

 

人生で初めて、何かを諦めたくないと思っている。

 

絶望的な状況でもしがみついている。

 

これまで33年間生きてきて、物心ついたときから、逆境を避けてきた。

 

弱かった。

 

弱かったから賢しくなったのか、賢しいから弱くなったのか、どちらが先だったかは分からない。

 

ただ、悪い状況に陥らないためだけに全力を傾けてきた。

 

誰よりも頭を回し、先読みをし、ダメージを最小限にし、そのときに備える。

 

それでもダメなら、頑張らない。

 

踏みとどまらないで、諦める。

 

俺が導き出した結論が不可なら、それは絶対に自分の手の及ばないことだから。

 

それにしがみつくのは、自分の心をすり減らすだけだ。

 

それでも諦めずに頑張るなんて俺にはできないし、それが上手くいったことも一度だってなかった。

 

 

追いつめられないように立ち回るか、追いつめられる前に諦めるか。

 

その両方ともに適性があり、そうなるように努力をしてきたのだと思う。

 

いかにも姑息で、意志薄弱

 

「がむしゃらにやる」「粘り強く諦めない」ことが最良の美徳とされるこの世において、俺はずっと劣等人格の烙印を押され続けてきた。

 

「頭でっかち」「理屈っぽい」「根性なし」「逃げ腰」

 

それでも、これ以外の生き方ができないから、そうしてきた。

 

それで、周りの誰よりも結果を出した。

 

賢しくしか怒られないなら、誰よりも賢しくなってやる。

 

他人の理解が及ばないほど深く。他人の想像が届かないほど開く。他人の考えが追いつかないほど速く。

 

賢く賢く賢く賢く賢く。

 

漫画でも、現実でも、世のあらゆるところで、頭がいいというのは半ば侮蔑や憐れみになっている。

 

なんでも確率を計算する敵キャラだの、現場を知らない官僚主義だの。

 

そういう偏見にすがって生きている人間は、同じ生物として扱わなければいいだけのことだ。

 

適当に、話のレベルを合わせてやればいい。

 

おっしゃる通りです、いえいえ何も知らない若造ですから、先輩には敵いません…………

 

求めているキャラクターが見え透いているような、薄っぺらい生物。

 

己のない生き物には、こちらがレベルを調整してやればいいだけのことだ。

 

この程度は屈辱でも何でもない。

 

ニワトリに言葉が通じないからと怒る人間はいない。

 

これを世の中ではコミュニケーション能力とか、管理職適性というらしい。

 

 

また脱線した。

 

賢い俺が、もうダメだと判断したら、それは本当にダメなのだ。

 

逆転は、必然的に起きる。

 

奇跡は、相応の確率通りに起きる。

 

だから、俺の頭は、もうやめておけと繰り返し諭してくる。

 

 

自分でやれるだけはやった。

 

これ以上は何が起きても、お前の責任ではない。

 

怒りが湧いてきたら、全て連中のせいにすればいい。ここでキレたっていいし、誰かを引っ張り出して酒を飲んだっていい。

 

どんな結果になっても、彼女たちは優しいから、「灰色くんが頑張ってくれて嬉しかった」と最後には言ってくれるだろう。

 

最悪の事態になっても、新たな推しを見つけるなんてその気になれば簡単なことだ。

 

認知どころか、すぐに記事を読んで喜んでもらえるようになる。

 

愛情の量が病的に多いお前は、どうせ誰かをすぐ好きになる。

 

何なら新しいコミュニティを探したり、恋愛したっていいだろう。

 

 

こだわるな。

 

思い入れるな。

 

たかが4ヶ月だ。

 

思い上がるな。

 

たった4ヶ月だ。

 

俺よりずっと長く愛してきて、ずっと多くのことを知っているやつが、たくさんいる。

 

俺はただ、舞い上がっていただけだ。

 

何をしてくれと頼まれたわけでもなければ、何を得たわけでもない。

 

 

そろそろ潮時だろう。

 

いつも通り、ショックに備えるために心の距離を取って、最悪のケースを想定して、イメトレでもして備えておけ。

 

いつもと同じだ。

 

そうして、今まで上手くやってきた。

 

何も、お前以外の誰かが死ぬわけじゃない。

 

かたやこっちは一度死んだ2周目、十分楽しんだだろう。

 

目の前の裁判や仕事にでもいい加減に向き合うことだ。

 

 

俺はどこまでも頭と口が回る野郎だ。

 

こうして書いていると、本当にそう思えてくる気がする。

 

けれど、今回ばかりはどうしてもダメだ。

 

諦めきれない。

 

人生で初めて、自分の理性、自分の賢さを現実に否定してほしいと思う。

 

それが外れていてくれと、藁にもすがる思いで祈っている。

 

何かの間違いでもいいから、奇跡が起きてくれと祈っている。

 

俺にできることを最後まで続けるのは、言い訳なのかもしれない。

 

俺は死力を尽くした。他のやつとは違う。

 

この経験は無駄にならないはずだ。

 

人をこれだけ好きになれるのはすごいことだ。

 

その熱量は大したものだ。

 

そう自分を慰めるための保険を積み立てているだけなのかもしれない。

 

 

だけど、今回だけは。

 

今回だけはせめて、俺の完璧すぎる読みを、現実が超えてほしい。

 

俺にはもう、ほとんど手は残っていないけれど。

 

何か。

 

何か。

 

なにかないか。

 

 

なにか。