ある日、ある男が、あるきっかけで生き返った話
一月、苦しくて、全てから逃げ出した。
二月、結局帰っても苦しくて、ドクターストップで、今度こそ逃げ出した。
三月、物理的に死にかけて、同時に全てを失った。
何もかもがどうでもよくなった。
四月、ずっと生きた心地がしなかったところから、西川兄貴のLiveを見に滋賀まで行って、命を救われた。
五月、気のいい友達になんとか命を繋いでもらった。
六月、やっぱりダメだった。またどん底まで落ちて死にかけた。
七月、立ち直りかけたところで、最愛の家族が亡くなった。急だった。
どん底から上がるだけだと思ったら、その底が抜けることを知った。複雑骨折したら立ち上がれないことを知った。
八月、喪が明けても空っぽだった。毎日、ただ時間を潰すために生きていた。
九月、兄貴の言葉を信じて、これだけを楽しみに生きてきたイナズマに行った。
偶然、通りがかりに女神を見た。Finallyという名前の、6人の女神だった。
十月、初めてFinallyのLiveに行った。楽しくて、熱くて、綺麗で、格好良くて、素晴らしくて、生まれて初めて、心底女性アーティストに惚れ込んだ。
たくさんの人生初、たくさんの楽しいことを教えてもらった。Liveが大好きになって、TMRだけじゃなく、オーラル、対バンアイドル、いろんなステージを楽しんだ。
十一月、ちょうどFinally初ライブから一ヶ月の日に、配信で兄貴と彼女たちが共演した。
他の人にとっては大したことじゃないかもしれないけど、俺にとってはこれ以上ない一大事だった。
2週間前から、あらゆる手段を考えて考えて、なりふり構わずにできることは全てやった。
フォロワーに嫌われても、友人に引かれても、現場で浮いても、メンバーにブロックされても、出禁になっても、それでも構わなかった。
兄貴の背中を、高校時代から15年追っかけてきた。特に今年の俺にとって、西川兄貴は命の恩人だった。
それに、Finallyにハマってからはまだ一ヶ月しか経ってないけど、人生で一番濃くて華やかで幸せな一ヶ月をもらった。
その人たちが顔を合わせる日のために、終わったら俺はもう死んでもいいと思って、考えついたことは全てやった。
今日、11/10。西川兄貴が、俺の長ったらしいクソ真面目なメールを読んでくれた。
出演が決まった日の晩に、勢いで書いた長文のメールだ。スタッフさんが、パンパンになっているメールボックスから抜き出して、バカみたいに長いのをわざわざ編集して差し出してくれたんだと思う。
兄貴は一通り読んでくれて、メンバーがそれにコメントをくれて、「熱がすごいもんね、もう」「じゃあ灰色のおかげで俺のこと知ってくれてるんだ」と、兄貴が言ってくれた。
俺以外の人間にとっては、芸能人がネット配信でメールを読んだ、たったそれだけのことかもしれない。
でも、俺にとっては、一生その背中を追うと決めていた神に、手がかすった瞬間だった。
兄貴は世界一の男、この世で一番尊敬する、一番歌が上手い、一番カッコいい、最高のエンターテイナーで、唯一無二の憧れの大人だ。
その人に、あれだけのことを言ってもらえた。
それも、今一番、人生で一番大好きな人たちについて書いたメールで。
あなたたちのことが大好きです、という気持ちが、伝えられた。
俺はもう、これだけでいい。
俺は、神と、女神たちに、死んだように生きていたこの身を、生き返らせてもらった。
喪ったものは大きすぎて、二度と戻らないけど、それでも俺は、俺なりに楽しく生きようと思う。
返しきれないほどのものを、今日もらったから。